柔道事故を避けるために

重篤事故の共通点

当会が被害者の重篤事故を調査すると、共通点が多々あることが判明した。

  • 初心者
  • 1年生(中学1年生、高校1年生)
  • 実力差(相手はかなりの経験者)
  • 体格差(体重差、身長差)
  • 事故前に「頭痛」を訴えていた(脳震盪の軽視)

さらに次のような事故時の練習環境も判明した。

  • 水分を取らせない練習(水分が不足すると脳が委縮し、架橋静脈が切れやすくなる)
  • 初心者で入部したての1年生も、上級生と同じ練習メニュー
  • 休みなしの長時間の練習
  • まだ夏前だが急に暑くなった日(事故が集中するのは5~8月)
  • 定期試験の終了直後
    (定期試験前1週間は部活休止で、寝不足のケースがある中、試験終了後に普段よりもさらに長時間の練習を始める)
  • 夏休みに入った直後(早朝から夜遅くまでの練習)
  • 合宿中(具合が悪くなっても家族は気づいてあげられない。教師の受診許可が必要。)

これらは、他のスポーツ事故にも共通する事故時の練習環境である。
どのような状況下で事故が発生しているかを知ることは、事故防止対策を考える時の基本である。

 

Injury……予測でき、避けられる事故

2010年に欧米の柔道連盟に「何人の子ども達が亡くなっているのか」を問い合わせた。
「事故」であるから当然accidentという単語を使って問い合わせたが、返って来たメールにはinjuryという単語が使われていた。何度かやり取りをするうちに、
Injury……予測でき、避けられる事故
Accident……人智を尽くしても、なおかつ避けられない事故
だということが理解できた。

欧米にとって、スポーツによる重篤事故はInjury、つまり「防げる事故」「避けられる事故」との認識だった。
当然指導者資格も厳密で、フランスの柔道指導者資格は国家資格で国家試験に合格しなければ取得できない。
リスクマネジメントもしっかり確立しており、イギリス柔道連盟のSafelandings注1を読むと、いかに子ども達の安全(怪我だけでなく、虐待も含めて)に腐心しているかがよくわかる。当然どの国も死亡事故も重篤事故もゼロであった。

参考資料


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