アメリカ元女子サッカー選手が、「脳しんとうの研究に協力するため、死後に脳を献体する」と発表

アメリカ元女子サッカー選手のブランディ・チャステイン氏が、「慢性外傷性脳症(CTE)」の研究に役立てるため、死後に脳を献体すると発表した。
複数の元アスリートが脳の献体を申し出ており、チャステイン氏は女性では2番目である。

https://jcc.jp/globali/id/1654/
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2016/03/05/kiji/K20160305012157230.html

慢性外傷性脳症(CTE)は、脳を解剖した際、たんぱく質のタウが蓄積していたり、脳組織が変性したりしていることによって初めて明らかになる。
従って脳の献体は、慢性外傷性脳症(CTE)の解明に非常に重要なのである。

元NFL(National Football League)選手が、脳への障害を発端とする病気を発症する確率は、一般人の2倍であることが半年ほど前の記事で明らかになっている。
http://www.nfljapan.com/column/59617.html
保険統計会社の調査によると、NFL引退選手の約14%がアルツハイマー病を発症し、さらに14%が中程度の認知症を発症するという。ALS(筋萎縮性側索硬化症)やパーキンソン病の発症確率も含めると30%に達し、これは一般人の発症確率の2倍に値する。

柔道では頭を打つことがよくあるためか、柔道界では頭を打つことに対し鈍感になっているように思われる。
全柔連は安全指導や事故防止を目的に「柔道の安全指導DVD」を作成した。その映像の1分25秒過ぎに「頭を打たないように受け身をしている」とナレーションを流しながら、後頭部を打ちつけている映像を3回もスローモーションで見せている。
https://www.youtube.com/watch?v=EzCwsK41rCU
これではDVDを見た子ども達が、「この程度はぶつけたうちに入らないんだ」と誤解してしまう恐れがある。
早急に改訂版の作成を検討すべきである。

小中高生の指導では、子ども達が頭を打たないように細心の指導を心掛けるべきである。万一頭を打った時はすぐに練習を中止し、どんなに軽い症状であっても、最低1週間は柔道をさせてはならない。
絞め技で絞め落とした時も同じである。
「ちょっと頭をぶつけたからといって1週間も休んでいたら強くならない!」言う指導者もいるだろう。しかし、生徒がたった1週間練習を休んでまた元気に柔道を続けられるのと、無理に練習を続けた生徒が慢性外傷性脳症(CTE)を発症して一生苦しみ続けるのとでは、どちらを選択すべきか、幼い子どもでもわかることである。

全柔連の作成した冊子「柔道の安全指導(第4版)」が全指導者に配布されている。
そこには脳しんとうの恐ろしさや万一の場合の対処法などが詳細に書かれている。
全ての指導者が脳しんとうについて十分学び、その恐ろしさを熟知して指導に当たっていただきたい。

小中高生の脳は、まだ発達途上であることを忘れてはならない。

2016年4月2日




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