群馬県でまた柔道事故が発生!

5月31日に群馬県館林市立の中学校で、3年生の柔道部男子部員が頭を打って急性硬膜下血腫を発症。現在も意識不明の重体になっていることが、7月20日付朝日新聞夕刊に報道された。
http://www.asahi.com/articles/ASJ7N3SLVJ7NUTQP00S.html
男子生徒は48キロ、約160センチ、練習相手の同級生は117キロ、約175センチと、体重差が2.4倍の69キロもあることに私共は驚愕した。
さらに受傷の原因が「大外刈り」だったことに愕然とした。
「体重差、身長差のある者同士が組んでいる時に事故が多発している」「事故原因の多くが大外刈りである」と我々が再三警告を発し続けてきたにも関わらず、また同じ事故が起きてしまった。
柔道指導者達の、危機意識のあまりの低さに悲しくなる。

朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/DA3S12470626.html

毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160721/k00/00m/040/092000c
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160722-00000015-mai-soci

事故から2ヶ月近く経った7月20日の時点で、
1.被害者生徒と、取り組みをした相手の生徒に、約70キロの体重差があったこと
2.大外刈りを受けて頭を打った詳しい状況
3.中1から柔道を始めた2人の現在の技量
4.50代顧問(学校行事のため当日不在)や、20代副顧問の安全意識
などを、館林市教委は把握していなかったと、報じられている。
そして「市教委は21日、事故原因や当時の指導態勢などについて再調査を始めた」とある。

朝日新聞が第一報を報じたのは7月20日の夕刊である。
報道後翌日の21日になって初めて市教委は、市内の中学校に「柔道の部活や授業では、体格差や技ごとの危険性に配慮して指導するように」と要請して、授業での大外刈りを控えさせた。
もし報道されなかったら、市教委は市内の学校に対して注意喚起すら行わなかったのであろうか?

文科省は「学校事故対応に関する指針」(平成28年3月31日付)で、
「原則として3日以内(注:事故発生後3日以内)をめどに、関係する全教職員からの聴き取り調を行うとともに、心のケアに留意しながら、必要に応じて、事故現場に居合わせた児童生徒等の聴き取り調査を行うこと」と明記している。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm

更に館林市教委は、「原因分析や再発防止に向けた第三者委員会を設ける予定はない」と公言している。文科省は同じく「学校事故対応に関する指針」で、
「必要と認められる際には都道府県等担当課が、中立的な外部専門家が参画した調査委員会を設置して行うこと」と明記している。
「必要と認められる際」というのは、「教育活動自体に事故の要因があると考えられる場合」とある。
「この事故の原因は、教育活動の一環である部活動とは関係ない」と館林市教委は考えているのかと、強く問いたい。

2003年、須賀川市の中学1年生が急性硬膜下血腫を発症して遷延性意識障害となった事故(事件と言うべき暴行)で、学校が市教委に提出した事故発生報告書には「『柔道部、柔道部員の責任でもないし、学校の責任でもない』と母親が発言した」と記載されているが、母親はこのようなことは一切発言していない。
2004年、横浜市の中学3年生が急性硬膜下血腫を発症して重い障害を負った事故(事件と言うべき暴行)で、学校が市教委に提出した事故発生報告書には「『柔道部の練習と傷病との間には直接の関係はない』と、保護者から聞いている」と記載されている。家族はこのような発言は一切していない。
生徒が生死を彷徨っている時に、須賀川の中学校も横浜の中学校も、なぜこのような嘘の報告書が作成できたのだろうか。教育者としての人格を疑いたくなる。
館林市の本件の中学校は、「教育活動自体に事故の要因が無い」と市教委がとらえてしまうような報告書を提出したのだろうか。疑問である。
市教委も学校も、文科省の「学校事故対応に関する指針」を熟読していただきたい。

この中学校では部員が少ないため、体格差のあるペアでの練習が日常的に行なわれていたという。
オリンピック選手ですら体重別で闘っているが、これには正当な理由があるからである。

本年度の柔道の重篤事故は、報道に挙がったものだけでもすでに下記の通りである。
4月.仙台で高校3年生が頸椎損傷で死亡
5月.館林で中学3年生が急性硬膜下血腫で意識不明
6月.名古屋で45歳の男性が急性硬膜下血腫で死亡

しかし忘れてはならない。柔道の重篤事故は、100%防げる!

2016年7月28日




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