国家賠償法は犯罪教師までは守らない

己が振るった暴力で生徒が死のうが障害者になろうが、「国家賠償法(以後は国賠法と略す)に守られているから自分は何の責任も取らなくて済む」と考えている教師がおられたら、この判決を心して受けとめていただきたい。

2009年大分県立竹田高校の剣道部顧問が、工藤剣太君に他の部員以上の練習を強要し、熱中症で倒れた剣太君にまたがり、「演技じゃろが」と平手打ちを連打した。剣太くんはその日熱中症のため死亡した。昨年12月22日大分地裁はこの顧問に重過失があったとして、国賠法に基づき、県に対し100万円を当顧問に請求するよう命じる判決を下した。
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/12/23/JD0055317184
http://kyouikublog.wpblog.jp/12168.html

この事件は、2013年民事で県に4656万円の支払いを命じる判決が下りたが、剣太君の両親は顧問教諭の責任を求めて最高裁まで争った。しかし残念ながら国賠法に守られた顧問への賠償責任は認められなかった。大分県警は顧問・副顧問を業務上過失致死で書類送検したが、立件されずに終わった。

しかし両親はあきらめなかった。
「公務員個人に『故意』または『重大な過失』があった場合、賠償責任を負った国や地方自治体がその公務員に賠償の負担を求める権利(求償権)を持つ」とする国賠法の規定に基づき、支援者と共に裁判を起こし、今回の判決を勝ち取った。
国賠法に血を通わせた剣太君の両親と支援者そして裁判所に拍手を送りたい。

しかし非常に残念なニュースが入ってきた。
大分県教育委員会は、顧問には賠償を負担させるほど重大な過失はなかったとして控訴したのだ。
http://www.sankei.com/west/news/170105/wst1701050055-n1.html
http://mainichi.jp/articles/20170106/k00/00m/040/060000c
http://www.oab.co.jp/news/?id=2017-01-05&news_id=9133
熱中症で死に至らしめるほどの過酷なしごきと暴力を、大分県教育委員会は「適切な指導」と言いたいのか。

福井市立中学校で教諭が1年男子生徒を殴って失明させた暴力事件では、2007年福井地裁が教諭の暴力を「故意」と認め、福井市に賠償金を支払うようにとの判決を下している。
福井市は控訴せず、「教諭の暴力は、公務員の正当な職務の範囲外」として、国家賠償法に基づいて教諭に賠償額の一部を請求した。
http://kyouikublog.wpblog.jp/454.html
剣太君を死に至らしめた顧問の行為が、「暴力」や「重大な過失」に当たるか否かは小学生でも判断できる。教育の府である大分県教育委員会の良識はどこにあるのだろうか。

2017年1月14日




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