防具を投げつけて生徒にけがを負わせた顧問教諭を“逮捕”

剣道部の指導中に防具を投げつけて、男子部員(当時1年)に前頭部を裂く全治2週間のけがを負わせたとして、岩手県立福岡高校剣道部顧問教諭(28)が傷害の疑いで逮捕された。

【二戸・福岡高剣道部顧問を逮捕 部員に体罰、傷害容疑】岩手日報17年2月2日付
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20170202_1
【傷害容疑の県立高校講師逮捕“異例の判断”被害届を促したのは県教委/岩手】IBS岩手放送2017年2月2日付
http://news.ibc.co.jp/item_29224.html

事件発生は2015年8月10日だが、16年11月に被害生徒から被害届が出されて二戸署が捜査していた。しかし剣道部顧問は「脇に置いていた防具の胴を床に投げつけた際、頭を下げた状態だった男子部員の額に当たった」と学校に説明して、故意ではないと暴力を否定していた。

なによりも私どもが驚いたのは、「逮捕」されたことだ。
わいせつや窃盗は学校教職員であろうと無条件に逮捕や起訴されるが、学校内の暴力や虐待は逮捕どころか起訴すらなかなかされない。
理由としては、狭い閉鎖社会の学校で今後も生活し続けなければならない被害生徒が声を上げにくいこと、保護者も我が子を人質に取られているように感じてやはり声が上げにくいのであろう。

しかし今回の岩手では、被害者家族に被害届を出すように勧めたのは県教育委員会であった。
いろいろなしがらみや我が子の将来を考えて警察に相談することを躊躇していても、教育委員会に勧められれば安心して被害届が出せる。
県教育委員会が「真相を解明するため」「究極の第三者機関である警察」に被害届を出すよう勧める行動に踏み出したことに深く感激した。

それに引き換え先日来ニュースで取り上げている大分県立竹田高校剣道部の事件は、あれほどひどい暴力をふるっても顧問教諭は不起訴だ。
http://judojiko.net/news/2424.html
http://judojiko.net/news/2470.html

最近は教員であろうと、明らかな暴力行為は警察も動くケースが増えてはきている。
【中2剣道部員を竹刀で殴り入院させる…顧問の男性教諭を停職6カ月】
http://www.sanspo.com/geino/news/20170119/tro17011905010002-n1.html
しかしせいぜい略式起訴の罰金刑で終わりだ。

柔道でも、誰が見ても明らかな事件が多く発生してきた。
☆2004年横浜市立奈良中学校で、柔道部顧問の薦めたスポーツ推薦を断った生徒を顧問が柔道指導の名のもとに暴行し、急性硬膜下血腫を発症させて被害生徒は重度の障害を負った。
顧問教諭は傷害罪で書類送検されたが、「柔道場で柔道衣を着て柔道技を使っていたら、どこまでが柔道で、どこからが犯罪か線が引けない」との理由で不起訴となった。
講道館杯優勝者であるためか、教育委員会からの処分すら一切ない。
☆2009年滋賀県愛荘町立秦荘中学校で、中学1年男子生徒が喘息の持病があるため柔道部顧問に別メニューでの練習を依頼していた。しかし他の生徒よりも過酷で長時間の練習をさせられ、ふらふらになってまともに歩くことすらできなくなったにもかかわらず、顧問は更に投げて、生徒は急性硬膜下血腫を発症して死亡した。
顧問教諭は傷害致死容疑、校長は業務上過失致死容疑で書類送検されたが、どちらも不起訴で終わった。

多くの一般市民は、警察沙汰となるような暴力や事件とは無縁の生活を送っている。
ある日突然事件に巻き込まれ、しかも加害者が教職員や同じ生徒であったならば、警察に被害届を出すことを躊躇するのは当然である。
今回の岩手県教育委員会の対応は、被害生徒とその家族にとって、どれほどの救いであったかと思われる。
他の教育委員会も、岩手県教育委員会が「真相を解明するため」「究極の第三者機関である警察」に被害届を出すよう家族に勧めたというその考え方を学んでいただきたい。

2017年2月10日




ページの先頭に戻る