校内柔道大会で四肢麻痺となった訴訟で判決

2011年3月福岡市の県立高校で開かれた校内武道大会で、クラス対抗の柔道の試合に出場した当時高校1年生の男子生徒が試合中に転倒し、畳で頭部を打って頚髄損傷を発症し四肢麻痺の重い後遺症が残った。
この裁判の判決が4月24日福岡地裁であった。平田裁判長は「安全配慮義務に違反した」と認めて約1億2400万円の支払いを県に命じた。
【校内の柔道大会で後遺症 福岡県に1億2千万円賠償命令】朝日新聞2017年4月24日付
http://www.asahi.com/articles/ASK4S5HHJK4STIPE02R.html
【「教諭らによる対応は安全指導の基本を欠いていた」高校の柔道事故、福岡県に1億2千万円賠償命令】産経新聞2017年4月24日付
http://www.sankei.com/west/news/170424/wst1704240104-n1.html
柔道事故 福岡県に1億2000万円支払い命令 福岡地裁 試合中にけがをして手足に障害が残る】毎日新聞2017年4月24日付
https://mainichi.jp/articles/20170425/k00/00m/040/094000c
【高校の柔道事故で賠償命令、福岡 県に1億2千万円】西日本新聞2017年4月24日付
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/323927
【高校の柔道事故で賠償命令、福岡 県に1億2千万円】共同通信2017年4月24日付
https://this.kiji.is/229214990916927496?c=110564226228225532
【柔道で後遺症 1・2億円賠償判決、校内大会事故 県に命令】読売新聞2017年4月25日付
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20170425-OYS1T50017.html

私どもは、学校の重篤事故、特に柔道事故は100%防げると確信している。
それは学校で大きな事故が起こった時、必ずそれ以前に予兆の小さな事故が発生しているからなのだ。その時点でしっかり事故防止に動いていれば、大事故は発生しないのだ。
今回も事故前年の柔道大会で、骨折などの事故が2件も発生していた。しかし学校は、事故分析も予防対策も取らなかった。重大事故は、起こるべくして起こるのだ。

さらに裁判長は、クラス対抗で生徒たちは競争心を煽られて、冷静さを欠く試合をして事故が起きる可能性があったことを認め、「危険性を十分に説明し、指導したとは認められない」と断じた。
この事故も、起こるべくして起こったと裁判所は認めてくれた。

2004年横浜市立奈良中学校の柔道部で、顧問による暴力的指導で中学3年生が重篤な障害を負った。
この裁判で、「柔道は格闘技であり、死亡や重大な障害が生じる危険のあることは一般的に知られているところであり、このことは民事・刑事訴訟問わず、証拠による証明を要しない」ことが「公知の事実」として判決で認められた。
つまり「柔道が危険であることは、世間一般の常識(公知の事実)」だと、裁判所で認められたのである。

柔道は危険なのだ。
だからこそ生徒たちにもしっかりその危険性を説明し、学校は安全配慮をした上で柔道指導を行ない、柔道大会を開催すべきなのだ。

多くの柔道家が「柔道は危険だから、怪我をするのはしょうがない」とおっしゃる。
しかし考えていただきたい。
包丁が危ないことは誰でも知っているが、多くの家庭で我が子に包丁を持たせてお手伝いをさせている。
だからこそ、親は我が子に包丁が危険であることをしっかり教え、正しい持ち方を教え、我が子が安全に包丁を使えるように指導しているのだ。
「包丁は危険だから、我が子が手を切るのはしょうがない」などと言う親が、どこにいるだろうか。
危険な柔道には何よりも丁寧な安全指導が求められるはずである。

2017年5月1日




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