福岡の柔道事故裁判 県が控訴

4月24日福岡地裁が「安全配慮義務に違反した」と認めて、約1億2400万円の支払いを県に命じた判決に対し、県は「学校教育における体育・スポーツ活動の推進への影響を鑑みた」との理由で、5月8日福岡高裁に控訴した。
【賠請訴訟 柔道大会で障害 県が控訴/福岡】
https://mainichi.jp/articles/20170509/ddl/k40/040/588000c

2011年3月福岡市の県立高校で開かれた校内武道大会で、クラス対抗の柔道の試合に出場した当時高校1年生の男子生徒が試合中に転倒し、畳で頭部を打って頚髄損傷を発症し四肢麻痺の重い後遺症が残ったのだ。
【校内柔道大会で四肢麻痺となった訴訟で判決】
http://judojiko.net/news/2524.html

この高校1年生が頚髄損傷を負った前年の校内武道大会でも、骨折事故が2件も発生している。県教育委員会は、子どもたちが頚髄損傷や骨折するよりも、スポーツ活動推進の方が大切なのか?

福岡ではこの事故の4年後2015年にまた柔道事故が発生し、中学1年生が部活中に急性硬膜下血腫を発症して亡くなっている。2011年の事故後、県教委は事故を防ぐためにいったいどのような対策を取ってきたのか?
柔道事故を分析するといつも同じキーワードが並ぶのはなぜなのか?
今回の事故に限ったキーワードを並べてみても、
☆重篤事故以前に、骨折事故などかなり大きな事故が発生している。
>>2016年5月に群馬県館林市の中学3年生が約束稽古で急性硬膜下血腫を発症した事故も、2週間前に骨折事故があった。
☆骨折ほどの事故なのに、事故予防対策の協議すらしていなかった。
>>館林市の骨折事故も、何の協議すら行われていなかった。
「柔道は武道だから危険は付きもの」なので、骨折程度は軽傷なのか?
☆脳損傷事故は乱取りや約束稽古中に多く発生しているが、頚髄損傷は試合中に多く発生している。
>>2010年5月埼玉県の高校3年生が県大会地区予選の試合で、相手生徒が被害生徒に覆いかぶさって倒れ、被害生徒は頚髄損傷で四肢麻痺となる
☆頚髄損傷事故の60%は、相手に技を掛けようとして損傷している。
(全柔連発行「柔道の安全指導」より)
>>2016年4月に宮城県仙台市の高校3年生が校内の練習試合で袖釣込腰を掛けたが、相手生徒も踏ん張り、相手生徒と一緒に畳に倒れ込み頸椎骨折脱臼で死亡。

このようにコピペ事故だらけでは、事故防止対策を行っていたなどという言い訳は通じない。

過去の新聞記事などから福岡県内の柔道死亡事故を、これだけ見つけ出せた。
★1989年5月1日 高校2年生 脳挫傷 死亡
★1995年8月30日 中学1年生 急性硬膜下血腫 死亡
★1997年9月17日 高校3年生 急性心不全 死亡
★2002年1月30日 中学2年生 急性硬膜下血腫 死亡
★2003年10月7日 高校1年生 急性硬膜下血腫 死亡
★2015年5月22日 中学1年生 急性硬膜下血腫 死亡
私どもが調べた限りでは、福岡県の柔道事故死亡人数は千葉県と共にトップだ。

下記は2015年に中学1年生の娘さんを亡くされたお父さんが書き始められたブログだ。
http://ikuyegihs.hatenablog.com/entry/2017/04/08/151236
お子さんをお持ちの教育委員会の方々も多いであろう。
教育委員会の方々のお子さんが、柔道で死んでしまった時のことを想像していただきたい。
教育委員会の方々のお子さんが、柔道で障害者になった時の生活を想像していただきたい。

福岡県は、「柔道でオリンピック選手を輩出した県」を目指すのではなく、「柔道で子どもたちが死んでいない県」「柔道で子どもたちが障害者になっていない県」を目指していただけないだろうか。

2017年5月12日




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