柔道は危険!

柔道は危険だ。いや、柔道だけでなく全てのスポーツは危険を併せ持っている。
だからこそ、どうしたら安全に楽しめるかを考えてスポーツを行わなければならない。

市教委の柔道部巡回指導に同行しているある当会会員は、「柔道でたくさんの子どもたちが亡くなっていることを知っていますか?」と、毎回必ず中学生たちに問う。すると多くの中学生たちが「知っている」と手を上げる。「では、柔道をやっていて自分も死ぬことがあるかもしれないと考えたことはありますか?」と聞くと、誰も手を上げない。生徒たちは自分と死を結びつけては考えられないのだ。ところがある中学校の柔道部で同じ質問をしたところ、ほぼ全員が手を挙げたという。ここでは入部希望者に、「柔道は死ぬこともある危険なスポーツである」というレクチャーをまず行ってから、入部届けを出させるとのことである。
「初心者大歓迎なんだって! みんな初心者なんだって!」と、安心して入部して命を失くした当会会員の子どもと、「柔道は危険なスポーツであるから、細心の注意を払わなければならない」と、最初に教え込まれて入部した生徒たちとでは、けがに対する心構えがまったく違う。
事故を起こさないために、子どもたちには、「柔道は危険なのだ」「君たちはその危険なスポーツをしているのだ」としっかり教えてほしい。子どもの気構えもおのずと変わってくるだろう。

全柔連は4月29日から5月31日まで「柔道重大事故根絶月間」として柔道事故撲滅に取り組んでおり、下記スローガンを掲げている。
1.例年5月から8月に頭部打撲による事故が集中しています。
2.初心者、新入部員のために無理のない練習メニューを作成してください。
3.毎回の練習に柔道に必要な体力を高める運動を取り入れてください。
4.指導者、保護者、子どもたち全てが安全な練習法を共有してください。
5.片足立ちで投げる技、組み手と逆方向に掛ける技は後回しにしてください。
6.5月以降は夏日となる日もあるので熱中症にも十分留意してください。
http://www.judo.or.jp/p/41467

すばらしい内容なので、ぜひ全国の柔道指導者に周知徹底して事故を防いでいただきたい。
全柔連のスローガンをベースに、私どもも被害者家族の立場から具体的なスローガンを考えてみた。
1.経験者と組んだ初心者の事故が、5月から8月にかけて多く発生している。その多くが、頭部外傷によるものである
2.初心者、経験者を問わず新入部員には、半年間別メニューで指導する
3.練習前に体調チェックシートを記入し、体温を上昇させるために準備運動は10分以上行う
4.練習前に指導者、保護者、子どもたち全員で「柔道は危険。だから安全に楽しもう!」と確認する
5.技を掛ける練習を行う時は、必ず自分より上級のレベルの者と行う
6.柔道着は厚地であり、その上柔道場は温度湿度共に高くなりやすい。柔道・剣道中のWBGT計測では、気温は実測より3℃高い数値で計測する

さらに、
☆練習前と練習中1時間おきに体温を測定し、練習前より1度以上体温が上昇した者は練習を休止する。(数秒で計測できる体温計がある)
☆20分おきに強制的に100~200ccの水分補給を行なう(できたら0.2% の塩を入れたものを)
☆WBGTでの計測(千円で購入可)
午後の柔道場や体育館のWBGTは、外気温よりも高くなることを忘れてはならない
☆全柔連指導者資格を有しなければ、たとえ学校であろうと柔道指導を行ってはならない。

今年こそ、1人たりとも子どもを死なせてはなりません!
今年こそ、1人たりとも子どもを障害者にしてはなりません!
柔道人口が日本の何倍もの欧米で、それが当たり前のようにできているのだから、
柔道の家元である日本でできないわけがありません!!

(注)WBGT…(Wet Bulb Globe Temperature) 暑さ指数
熱中症を予防する目的で、1954年にアメリカで提案された指数。単位は℃。
①湿度 ②日射・輻射など周辺の熱環境 ③気温 の三点を取り入れている。
WBGT21℃以上では、熱中症による死亡事故が発生する可能性があるので、熱中症の兆候に注意するとともに、積極的に水分・塩分を補給しなければならない。

2017年5月21日




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