中止する勇気・中断する勇気―命が最優先

6月16日午後4時頃、大阪枚方市の市立長尾中学校で、体育祭に参加していた生徒
18人が熱中症の症状を訴え、14人が病院に搬送された。うち6人は重症だったという。
http://www.sankei.com/west/news/170616/wst1706160068-n1.html
この日枚方市では、午後2時に最高気温が28.6℃を記録している。
同校のグラウンドには日よけがなく、当日は午前中から気分が悪くなる生徒が出ていた。

枚方市に住む当会会員は、この事故の様子を目の当たりにしており、
「暑い日には、途中で体育祭を止める勇気が、学校長や先生に必要だった」と訴えている。
しかし、同市内のある高校教師は、以前自分の学校でも熱中症の発生があったことも交えながら、「生徒は(そのような悪条件の日でも)行事をやりたがる」と、会員に話したという。
「生徒がやりたがっていれば、おいそれと中止にはできない」ということであろう。
このような考えは多くの教師が持っているのではないだろうか。

今年3月27日に、栃木県那須町のスキー場で、登山講習中の高校生ら8人が雪崩に遭って死亡した事故は、いまだ多くの人の記憶に新しい。
http://www.asahi.com/articles/ASK3Y733KK3YUTIL05Y.html
http://www.asahi.com/articles/ASK3Y66YTK3YUTIL04R.html
降雪のため登山を中止したが、当初予定になかったラッセル訓練を行い、雪崩に巻き込まれた。その訓練決行の判断は、県高体連の専門委員長と副委員長等の3人による。
前日から雪崩注意報が出ていたが、委員長の経験則から、「安全」と判断したという。

この雪崩事故の報道を耳にして、2010年6月18日に浜松市の浜名湖で起きた、カッターボート転覆事故を思い出した人も少なくないだろう。
http://www.asahi.com/special/playback/NGY201006210029.html
豊橋市立中学校1年生の西野花菜さんが、浜名湖での野外研修中に転覆したカッターボートの下に閉じ込められて亡くなった事故である。
当日は風雨の強まる荒天の中、校長の判断で予定通りカッターボート訓練を決行。様々な悪状況が重なり、最悪の事態を招いた。

枚方市立中学の熱中症の集団発生も、那須の雪崩事故やカッターボート事故も、責任者や学校長の「中止する」という一言があれば、防げたはずである。
予定していた行事を取りやめたり中断したりするには、生徒や親からの不満の声が上がるのを覚悟しなければならない。さらに費用が無駄になる、準備したことが無駄になるなどの、諸問題も発生するであろう。
しかし、学校が何よりも優先すべきは、預かっている子ども達の命である。
学校の管理職や団体の責任者は、常に命最優先の気持ちを持ち、時に行事を中止・中断する勇気を持っていてほしい。

西野花菜さんの父親である友章さんは言っている。
「『過去に大丈夫だったから今回も大丈夫だろう』という経験則は、正しい判断の邪魔をする。結果を見れば、事故がおきる条件がそろっていたことが分かる。
(気温・湿度・風速・雨の量・雪の量などの、)データ―にもとづいた判断が必要」と。

この言葉は、上記3つの事故全てにあてはまるし、その他の多くの事故についても然りである。
これから数か月は、熱中症の発生に気を配らなければならない時期である。
WBGT(暑さ指数)の数値や前日との気温差、水分摂取などに気を配りながら、無事にこの時期を乗り越えたい。

2017年7月9日




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