「全国小学生学年別柔道大会の廃止」―主役は子どもたち

3月半ば、全日本柔道連盟の山下泰裕会長が、「小学生の全国大会の廃止」を公表した。
https://www.judo.or.jp/news/9766/

柔道界における、久々の清々しいニュースである。
全国各地の技能レベルの高い小学生にとって、大きな目標となっていた当大会は、勝利至上主義が横行し、数々の弊害を生み出してきた。

・成長期にある、身体の出来ていない小学生に、長時間・過度の練習を課している
・そういった指導体制のもと、重篤事故が発生している
・試合が2階級の体重区分しかないため、成長期に過酷な減量を強いられる事例がある
・2階級区分のために、大きな体重差がある危険な対戦が生じる
・勝つことのみを目標とする空気の中で煽られた親は、子どもの身体を守ることを忘れ、
子どもに上位の成績を取らせることしか考えられなくなってしまう
・そういった雰囲気の中では、試合場におけるマナーを欠き、嘉納治五郎師範の教えから遠のいてしまう―即ち、柔道 本来の目的やあり方を見失ってしまう
・「うち(道場)の子さえよければ」という自分勝手な考えから、指導者が、反則ギリギリの危険な技や危険な行為を教え、 やらせている―(それによって重い障害を負ったり亡くなったりした子がいる)

何より、子どもたち自身が、柔道を行っている目的を見失ってしまう。

子どもが柔道を始めたきっかけはさまざまで、目標も人それぞれだ。
だが、疑いようのない事実がある。やっているのは子どもたちで、自分のためにやっているということ。親が満足感を得るためや、指導者に「勝利」の栄光を持ち帰るためではない。
スポーツの主役は、子どもたち本人に他ならない。
自分の目標と身の丈に合った学びをすればいい。
指導者はそのための伴走者であり、親は、我が子やその仲間に危険が及ばないよう見守る役目を担っているのだ。

勝利至上主義に支配される、少年期の行き過ぎた指導や過度の練習は、柔道だけでなく他のスポーツにも見られる。
他に先駆けての柔道界の決定が引き金となり、あらゆる競技で見直しがなされることを願う。
子どもにとってのスポーツのあり方を、良き方向へ変えていくために。




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