「日本の柔道、危機的な状況―いじめられ、燃え尽きた子供たちが柔道を辞める」

“Japan judo hits crisis point as bullied, burnt-out children quit”
AFP通信を和訳  2022年6月20日

https://www.france24.com/en/live-news/20220620-japan-judo-hits-crisis-point-as-bullied-burnt-out-children-quit

https://www.japantimes.co.jp/sports/2022/06/21/olympics/summer-olympics/olympic-judo/judo-children-bullying-burnout/

<写真&説明文①>(説明文は記事の最後に記載)

袋井市 - 日本は柔道の本場だが、過剰な勝利至上主義、体罰、無理な減量などにより多くの子どもたちが柔道をやめている。伝統ある柔道の将来に対する不安が高まっている。

問題の大きさを示すように、全日本柔道連盟(全柔連)は10歳以上の小学生が参加する全国小学生学年別大会の廃止を決め、過激な練習の影響を警告した。

全国柔道事故被害者の会によると1983年から2016年の間に日本の学校で121人の生徒が柔道事故で亡くなっている。

日本は五輪柔道のメダルランキングで常に上位をしめているが、全柔連の山下泰裕会長は、親やコーチが目先の栄光を追いかけるあまり、このスポーツの価値が失われている、とAFPに対して述べた。

「柔道は人間性を重視するスポーツだ」「もし勝つこと以外に価値を見出せず、結果がすべてだと思うなら、それは歪んでしまう。」と日本オリンピック委員会の会長でもあり、1984年のロサンゼルス大会で金メダルを獲得した山下氏は語った。

全柔連の発表によると、日本の柔道人口は2004年以来ほぼ半減し、約12万人になった。
最も減少しているのは子どもたちである。

より軽い階級で競技できるようにするため、小学生が強制的に厳しい減量をさせられ、時には6キロも体重を減らされる子どもがいるとの報告がされている。

子どもたちはオリンピック選手が行うような危険な体勢からの技を教えられ、激しいトレーニングが行われる。彼らは負傷し、燃え尽きてしまうことがある。

親や指導者が試合中に審判を非難することはよく知られており、いじめや虐待の改革がこれまでこのスポーツで行われてきたにもかかわらず、体罰が未だに存在している。

全柔連は3月に10歳から12歳までのエリートを対象とした全国大会を廃止し、講演会や練習会などのイベントに置き換えることを決定した。

<写真&説明文②>

それに対し親や指導者は、子どもたちの夢を壊し、柔道の聖地としての日本の地位を危うくするものだと猛反発した。

言葉より暴力

昨年の地区優勝者である中学生の福王里音さん(13)は静岡県中部地域にある柔道クラブでAFPに、目標とする大会がない今年の小学生は「かわいそうに思う」と語った。

同じクラブに通う12歳の娘を持つ諸井浩介さんは、最初にこの知らせを聞いたときは「がっかりした」が、その理由を詳しく知り「良い決断だ」と判断した。

<写真&説明文③>

山下氏は、大会の廃止は「日本社会が抱える問題」にスポットライトを当てたと述べた。

「大会の廃止を決定してから2か月半経ちますが、テレビや新聞で議論がまだ続いている。」と述べ、ほとんどの意見が「賛成」であったと山下氏は付け加えた。

武道は戦後アメリカの占領下で禁止されたが、その後スポーツとして認められ、1964年の東京オリンピックで柔道はデビューした。

1992年のバルセロナオリンピックで銀メダルを獲得した柔道家の溝口典子さんは、体罰が子どもを強くするという考え方が日本ではまだ一般的であると語った。

<写真&説明文④>

「日本のスポーツ指導者は今でも言葉を使わず暴力を使うことにこだわっている」と述べた。
「DVと同様に、殴られることが愛情を示されることと同じなのだ。」

問題がある親

体罰を行った指導者は免許を剥奪することができるが、親をコントロールすることは難しい。

全国柔道事故被害者の会の倉田久子代表は、ほとんどの親が「危険性を考えず、ただ自分の子どもが勝つことを望んでいる」と指摘する。

倉田さんの15歳の息子は、2011年に高校の柔道部で負った頭部外傷が原因で死亡した。
「親は結局、柔道部と同じように勝てばいいというメンタリティーで、それに貢献している。」

フランスでコーチをしていた溝口氏は、日本の子どもたちにとって柔道は「楽しくない」ものであり、柔道の「マッチョ文化」はもはや過去のものであると語った。

<写真&説明文⑤>

「子どもたち一人一人に丁寧に接し、長期的な展望を持たなければ、日本の柔道は限界に達している」と溝口氏は述べた。

「古いタイプの指導者たちは、子どもたちの大会をなくしたら日本柔道の強さが失われるのではないかとおそれている。」

「しかし、私は日本の柔道はもっと強くなると思っています。」

© 2022 AFP

<文中の写真説明文>

①柔道の練習に参加する子どもたち(静岡県袋井市) Charly TRIBALLEAU AFP

②柔道の練習前に窓枠に登ってカーテンを開ける子供(静岡県袋井市) Charly TRIBALLEAU AFP

③1984年のロサンゼルス大会で金メダルを獲得した全日本柔道連盟会長の山下泰裕氏は、「柔道は人間性を重視するスポーツだ」と語る。「勝つこと以外に価値を見出せず、結果がすべてだとしたら、それは歪んでしまう。」PHILIP FONG AFP

④1992年のオリンピックで銀メダルを獲得した溝口典子氏は、体罰が子どもを強くするという考え方が、日本ではまだ一般的だと言う。「日本スポーツ界のコーチングでこだわってきたのは、言葉ではなく、暴力を使うということです。」 Charly TRIBALLEAU AFP

⑤静岡県袋井市で行われた柔道教室で練習する子どもたち。「子供たち一人ひとりに丁寧に接し、将来への長期的な展望を持たなければ、日本の柔道は限界に達している」と語る元オリンピックメダリストの溝口典子氏  Charly TRIBALLEAU AFP

(当会注:AFPの原文が消去されてしまったが、本文は原文に沿って和訳した)




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