重篤事故を防ぐ具体的な提案

  1. 頭痛のある生徒、体調のすぐれない生徒が自ら申し出られるシステムを作り、頭痛がある間は練習禁止とする。
    練習がしたいがために申告しない生徒もいるかもしれないが、指導者や周囲の者が気づいた場合は、ただちに練習を止めさせる。
  2. 脳震盪を発症した場合は、即練習を中止させる。
    絞め技で落ちた(意識を失うこと)場合も、練習は即中止(成長期の生徒を落としてはならない)。
    ……そんなに軽くても、最低1週間は練習禁止
  3. 塩分(0.1%~0.2% 1ℓの水に小さじ1/4)を含んだこまめな水分補給
    (スポーツドリンク500mlに水500mlを加えて、それに塩小さじ1/4でもよい)
    ……ウォータージャグを置いておくだけでは1年生は自分からは飲みにくい。
    1人1ℓのマイボトルを持たせ、練習中にどれだけ飲んだか飲むたびにチェック表に時間と量(目分量で充分)を記入させる。体重測定、体温測定と比べながら、各自自分の体調を見ながら水分摂取量を調整する。なぜ柔道での熱中症発症率が飛び抜けて高いかを考えれば、このくらいのことは当然していただきたい。
  4. 1時間おきに体重測定(柔道着を着たままでOK)と体温測定「でこピッと」(熱中症の項を参照)。
    ……なにもそこまでと思う人も多いかもしれないが、それだけ柔道はリスクが高いことを自覚し、子ども達を守っていただきたい。
  5. 1か月おきに、体脂肪率を測定する。(最近は安価な体重計でも体脂肪率や内臓脂肪率が計測できる)
    ……体脂肪率が高い人は、熱中症になりやすい。
  6.  初心者に上達者と同じ練習メニューや練習量を与えない。
  7. 上達者が初心者と組んだ時は、初心者をつねにいたわり、絶対に怪我をさせないように投げる。
    上級者が初心者の練習台になってあげるのはよいことだが、初心者を上級者の練習台にしてはならない(初心者が相手だと、どんな技でも面白いようにかかるからと投げるのを楽しむのは論外である。柔道の精神に反する)。
  8. 急に暑くなった日や、定期試験などで部活がしばらく休みになっていた後の練習再開は、体を順応させるために短時間で軽めの練習からスタートさせる。
  9. 下記のような体重記入表にメモ欄も作成しておき、前日によく眠れなかった時や、連日の練習で疲労が溜まっていると感じた時は、メモ欄に記載させるようにする。指導者に直接は言いづらいが、こういう形だと書きやすい。指導者はメモ欄をつねにチェックして生徒の練習時の体調に気を配り、生徒の様子によっては練習量を減らしたり休ませる。不眠や疲労が何日も続けて記載されていたら重篤事故発生のリスクが高まる。

下記のような記録帳を1人1冊持つとよい。
こんなに細かく測定や記入作業をしていたら練習に集中できないと言われそうだが、それだけ気をつけて管理しなければならないほど、危険を伴う競技だということを肝に銘じていただきたい。
きちんと健康管理やチェックを行なえば、安全に柔道ができる。

柔道練習記録帳

嘉納治五郎師は、「今日柔道は体育という目的からも学校に課せられているのであるから、教師たるものは、解剖、生理、衛生等の学識をも備え、それらの方面からも考えを立てて、柔道の修行がもっともよく体育の目的に適するように指導しなければならぬ。」と記しておられる。(嘉納治五郎著作集第二巻)


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