柔道の刑事裁判で指導者に有罪判決が確定 当会からのメッセージ

2014年4月30日、長野地裁において元柔道指導者が業務上過失傷害罪で有罪となる判決が下り、5月14日の控訴期限までに被告側と検察官役の指定弁護士の双方からの控訴がされず、判決が確定しました。
柔道事故において、非常に大きな意味を持つ判決の確定となりました。
ここに、今回の判決に対してのコメントを掲載いたします。

柔道事故刑事裁判の有罪判決をうけて

刑事裁判では立証責任が問われます。被告人の有罪を確実な証拠で立証することと、有罪となりうる事実が存在することを立証しなければ、「疑わしきは罰せず」の原則により有罪とされません。
この事件では、初心者で技量・体格差のある被害者に対し、指導者である被告人が基本技ではない片襟体落としをかけたことが事故の発生原因であり、被告人には重大な過失があったことが立証されたことになります。
被告人の「頭を打たないように注意をして投げた。当時加速損傷は一般的に知られておらず予見は不可能であった」との無罪主張を退け、裁判長が加速損傷に対する知見の有無ではなく、技量・体格差のある年少者に対して、力加減せずに投げるとどうなるかは、容易に予見でき、その過失は重いと認定したこと、更に、柔道界では今まで安全配慮にかけた指導が風潮としてあったことにも言及された事は、日本の柔道指導者に十分な注意喚起を与えただけではなく、広くスポーツに関わる指導者に対しも、注意喚起を与える結果となったものと考えます。

また、この判決は過去、嫌疑不十分として検察が不起訴とした事案を、検察審査会によって強制起訴され、裁判所が有罪と認定し、判決が確定した日本で初めての事件でもあります。
私たち全国柔道事故被害者の会としましても、また、全国の柔道事故で被害に遭われた方々にとりましても、過去において柔道事故が不起訴とされてきた事を考えると、非常に大きな意味を持つ画期的な司法判断であったと考えます。

私たちは、夫々の家族が持つ悲しみを乗り越えて、全国柔道事故被害者の会を設立いたしましたが、今回の判決で柔道の安全確立に向け一歩前進できたことを、当会の活動成果としても高く評価しております。

私たちは、日本の柔道が存続して行くためにも、すべての柔道指導者が裁判の中で取り上げられた柔道界での安全配慮に欠けた指導方法から決別し、子供たちが安全で、安心して、楽しめる柔道へと、変革をしていかなければならないと考えます。
有罪判決によって安全が確保がされるというのは決して本来的な事ではありませんが、本判決の持つ意味を、全ての柔道指導者が真摯に受けとめ、暴力や誤った指導方法に依存しない柔道指導のあり方が確立され、二度と重大事故が日本の柔道界において起こらないことを願って止みません。

2014年5月20日
全国柔道事故被害者の会




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