学校の脳震盪(のうしんとう)への対応は、まだこのレベル

今月(12月)27日、全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(ウインターカップ2015)準決勝戦で、名古屋市の桜花学園の主将(3年)が脳震盪(のうしんとう)で起き上がれなくなる事故が発生しました。

http://www.nikkansports.com/sports/news/1584603.html

上記リンクの記事には【ゴール前の混戦で遠藤が脳振とう、一時的に起き上がれられなくなる。】とあります。
私共が驚いたのは、続けて【井上真一コーチ(69)は「遠藤がいなければゲームにならない」と、すかさずタイムアウト。心配されたが、ほどなく復帰し、リードを15点に広げた。】と書いてあった点です。
遠藤選手も【脳振とうの時、「みんなの頑張れの声がして、やるしかないと思った」。】と試合後にコメントしています。

選手が倒れたのは第3クォーターの2分20秒過ぎですから、この選手はこの後試合終了まで18分余りをプレーし続けたことになります。
よくぞ無事だったと、記事を読みながらぞっとしました。

例えば私達がどこかに頭を強くぶつけた時、周りの人に「大丈夫ですか?」と問われれば、どんなに痛くても反射的に「大丈夫です」と答えてしまいます。皆様も同じような経験がお有りだと思います。
試合に夢中になっている選手はなおさらです。
『どうしても試合に出続けたい!』『みんなに迷惑をかけたくない!』といつもよりよけい頑張って、「大丈夫です!」と答えるでしょう。

だからこそ監督やコーチが、選手にストップをかける責任があるのです。
選手の健康を守る責任が、監督やコーチにはあるのです。

名古屋市では、今年5月に菊華高校ボクシング部で急性硬膜下血腫の重篤事故が発生しています。
http://www.sankei.com/west/news/151229/wst1512290063-n1.html
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2015/12/25/kiji/K20151225011745530.html http://www.daily.co.jp/ring/2015/12/25/0008673906.shtml
記事は、先輩が受傷した後輩を勇気づける内容の記事になっていますが、急性硬膜下血腫発症は「不慮の事故」ではありません。急性硬膜下血腫の後遺症は非常に重篤です。

学校は事故調査をしたのでしょうか?
どのような再発防止策が取られているのでしょうか?
美談で終わらせてはいけません。

名古屋市では今月(12月)9日にも、名古屋大学アメフト部で急性硬膜下血腫による死亡事故が発生しています。
http://mainichi.jp/articles/20151219/ddq/041/040/013000c
http://www.asahi.com/articles/ASHDB3JLMHDBOIPE004.html

アメリカ神経学会(ANN)は、2013年に「信頼性の高いエビデンスに基づくスポーツ脳震盪評価・管理ガイドライン」を発表しています。その中に、
脳震盪が疑われる選手は、直ちに競技参加を中止すべきである
高校以下の年齢の選手は、大学以上の年齢の選手よりも、回復に時間がかかるため、競技復帰という点において、より慎重な管理を要する
・専門的訓練を受けた有資格の医療従事者による評価を受けた上で、急性期症状が消失して初めて、競技への参加を徐々に再開すること
と明記されています。
https://www.m3.com/open/clinical/news/article/168908/
https://www.aan.com/pressroom/home/pressrelease/1164

桜花学園の選手は幸いにも大事に至らずに済んだのかもしれませんが、一歩間違えば重篤事故につながります。だからこそ今世界は脳震盪に強い注意を払っているのです。
脳震盪を軽視してはなりません。
2015年12月28日

当ホームページ「脳震盪」参照
http://judojiko.net/knowledge/injury/1832.html




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