全柔連が帝京科学大学柔道部暴力事件に対し厳しい処分を発表

全柔連は3月3日懲戒委員会を開き、2年生部員に暴力を振るって顎の骨を折る大怪我をさせた帝京科学大学柔道部員(3年生)を1年間の公式戦出場停止処分、同じく下級生達に複数回暴力を振るった4年生の柔道部員5人を3ヶ月~6ヶ月の公式戦出場停止処分、事件当時部長だった乙黒靖雄氏を1年間の指導禁止処分とした。
今年1月に大学側が乙黒靖雄氏の部長職を解任して謹慎処分としたばかりであった。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00317926.html
http://mainichi.jp/articles/20160304/k00/00m/040/055000c
http://www.asahi.com/articles/ASJ334HZ8J33UTQP010.html
http://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/20160303-OYT1T50153.html
http://www.sankei.com/affairs/news/160303/afr1603030009-n1.html
http://www.nikkansports.com/sports/news/1611865.html
http://www.tokyo-sports.co.jp/sports/othersports/514076/

処分を受けるまでの経緯としては、昨年11月中旬、当時の乙黒部長が自分の部屋に4年生部員の大半を集めて、この2年生を「厳しく指導しろ」と指示した直後から、上級生による殴る蹴るの暴力が複数回起きている。

柔道関係者が、「乙黒君をかばうわけではないが、彼が厳しく指導したからこそ数年で強くなった(注:帝京科学大柔道部は2010年に発足)。まあ、部員たちが厳しさをはき違えちゃったのかもしれない」と、東京スポーツ新聞の取材にコメントしているのを読み、驚愕した。

更に驚いたのは、被害に遭った2年生の自主退学だ。
毎日新聞の「部全体を高圧的な雰囲気が支配していたこともうかがえる」の一文でもわかるように、乙黒部長が部長職を解任されて謹慎処分となったり上級生が停学処分を受けたりした状況下で、2年生が上級と同じ屋根の下での寮生活や大学生活を続けることは、困難だったであろうと容易に想像がつく。

大学は、なぜ被害生徒を守ってあげなかったのか。
上級生による暴力は、すでに2014年から確認されていた。
帝京科学大学は、「命を学ぶ」大学であると標榜している。
大学は被害生徒を卒業するまで安全に守り通していたら、大学の理念を実地で学生たちに教え示せるすばらしいチャンスに替えられたはずだ。残念の一言である。

全柔連の今回の処罰決定は、同連盟が確実に変革の道を歩んでいることを実感できる。
しかし過去の暴力事案は、すでに卒業した部員も含まれていて事実関係を特定できなかったとの理由で不問にされた。
イギリス柔道連盟では、子どもの時に指導者から受けた暴力や虐待を大人になってから初めて訴え出ても、きちんと調査して、それが事実であれば加害者を処罰するシステムができている。
(資料ダウンロード:イギリス柔道連盟児童保護プログラム「Safe landings」翻訳版参照 http://judojiko.net/download
加害者がどんなに優秀な選手や有能な指導者であっても、である。

暴力や虐待に対し、過去に起きた事例も含め、、全柔連が今回と同じ毅然とした対応を取り続ければ、子どもたちは安心して柔道場に戻って来るであろう。

2016年3月12日




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