「第三者事故調査委員会」は、なぜ「柔道安全指導検討委員会」にすり替えられたのか?

5月30日に発生した市立中学校での柔道事故を受けて、群馬県館林市教育委員会は第三者による委員会を設け、9月6日に第1回会議を開いた。
http://mainichi.jp/articles/20160915/ddl/k10/040/139000c
しかしこの記事をよく読むと、おかしな点がいくつも見えてくる。

第一の問題点は、「第三者事故調査委員会」が立ち上がったように見えるが実は「第三者による柔道安全指導検討委員会」であって、第三者事故調査委員会ではないことである。
市教育長は、「検討委の提言と、全日本柔道連盟の冊子を参照し、対応マニュアル作成を検討したい」と市議会で答弁している。これは筋が違う。

事故が起きた場合は、まず「第三者事故調査委員会」を立ち上げて、事故調査と分析を行うことが最重要課題だ。その結果、必要に応じて「第三者による柔道安全指導検討委員会」を立ち上げるべきである。
教育長の発言に「検討委の提言」とあるが、事故の精密な調査なくして、適切な提言を出すことは不可能であろう。

全柔連は、すでに冊子「柔道の安全指導~事故をこうして防ごう~」を作成している
http://www.judo.or.jp/wp-content/uploads/2015/11/anzenshido2015.pdf

本書は、安全指導の観点から実に熟考して書かれており、時世の変化に合わせて改編され、現在は第四版を重ねている。
館林市は、これ以上の対応マニュアルを作成できるというのか?

第二の問題点は、この委員会の委員長が群馬大柔道部監督の小川正行教授であり、副委員長が県柔道連盟指導者資格委員会の塚田純也氏であることだ。両者とも県柔連の常任理事である。
柔道事故の検証において、事故当事者である柔道指導者を擁護する立場の人間が、第三者として公正に事故調査を行えるとは考えにくい。

文科省は「学校事故対応に関する指針」(平成28年3月31日付)で、「教育活動自体に事故の要因があると考えられる場合は、都道府県等担当課が、中立的な外部専門家が参画した調査委員会を設置して行うこと」と明記している。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm
http://judojiko.net/news/2303.html

館林市は、文科省が通達まで出している第三者事故調査委員会を、なぜ立ち上げようとしないのか。なぜ事故をうやむやにしようとするのか。

安全であるはずの学校で、一人の子どもの一生が滅茶苦茶にされたことに対し、館林市は真摯に向き合う責務がある。

2016年9月24日




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